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ICONIC WORLD

豊かな自然観の中に人々と自然、宇宙が調和する世界を追求したケルトの民

ICONIC WORLD

アイコニック・ワールド

玉田 俊郎=著
(東京造形大学教授)

「ケルト」って何?ケルトの「アイコン」や「シンボル」にはどんな由来があるの?本書は、ケルト文化を解説する小説と、冒険ファンタジーの2巻からなります。有史以前から続く風景の写真と、挿絵が、はるか彼方のアイルランドの世界へと読者を誘います。

 2020年3月刊行予定 2冊組(ケース入り)四六判 仮フランス装 定価=3,500円+税 発行=FUIGOLAND発売=東方出版 
 
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タラの丘のプリンセス物語

 

ここはヨーロッパの西の果て、アイルランドの大西洋を臨むモハーの断崖、ここに佇んでいると︑吹きつけてくる風に混じって遠い歴史の彼方から誰かの声が聴こえるような気がした。そして、私の中に、あるイメージが湧き上がり、それが物語となって周り燈籠のように動き始めた。それがこの物語の出発点ある。キリスト教以前のヨーロッパはケルトの文化に覆われていた。その文化は樹木を崇拝し、太陽と月を信仰する社会の下で成り立っていた。そんな時代のイメージが愛おしくもせつなく胸に迫ってくるのは現代という時代性と無縁ではない。そんな感慨を胸にスタートしたのがこの物語である。(p002)
 

                                        Tara photo Toshiro TAMADA

ヤドリギのアイコン化
サンザシのアイコン化
ニューグレンジの門

 

ケルトの夕映え

はじめに

読者の皆さんとともにこれよりICONIC WORLDに旅立ちたいと思います。途中どのようなアイコンに出会い何を感じるでしょうか。場合によっては迷宮に入るかもしれません。その時は慌てず、本を閉じ、目次に戻ってみてください。迷宮から逃れ出て再度チャレンジしてみてください。この本は史実や考古学を参考にしていますが、考古学の専門書や研究書ではありません。あくまでも読み物として描いたものです。多少なりとも著者や登場人物の思い込みや思いつき、フィクションの部分もあることをご了承ください。この物語はキリスト教以前のケルトの時代のことです。それは私の個人的興味に由来しています。アイルランドを旅した時、有史以前のさまざまなアイコンやシンボルに触れ、ケルト社会の不思議さと新鮮さ、魅力を感じることができました。ケルト、それは歴史の彼方に存在していたキリスト教以前のヨーロッパの人々と社会を表わしています。鬱蒼とした森に覆われていた彼の地にケルト人が住んでいました。(p026)
 
 
森の住民ケルト人は街や国家、帝国をつくることも、その欲望に駆られることもありませんでした。ひたすら太陽と月、森と自然、大地に対して自分たちの絆を強くすることを考えていました。そこに創り出されたアイコンは有機的で何か、空気が流れるように生き生きとしています。そのアイコンは現代においてもその姿を変えることなく、現代の私たちにメッセージを送り続けています。(p027)
 

バレン高地のドルメン photo: Toshiro TAMADA
ドン・エンガス
クロンマクノイズ
バレン高原

 

リージョナル・デザイン

本書はフランス、ブルゴーニュ、クリマを舞台にデザインワークショップを行ったことが起点となっています。「クリマ」(Climats)とはフランス語で、気候、風土という意味ですが、この言葉のついた場所だったのです。詳しく言えばクリマ共同組合が管理するワイン用葡萄畑のエリアをクリマと称しています。クリマは幾世紀もの歳月を重ねて真の意味でデザインされてきたものであることを知りました。ブランディングの根幹を創ってきたことに気づきました。

 

 
ブルゴーニュのクリマ(葡萄畑:左、中央)セント・コロンブ村(右)
 

2020年3月刊行予定 2冊組(ケース入り)四六判 仮フランス装 定価=3,500円+税 発行=FUIGOLAND発売=東方出版 

玉田俊郎(たまだ・としろう)[デザインマネジメント/インダストリアルデザイン]東京造形大学教授。1957年福島県生まれ。東北芸術工科大学助教授、ヘルシンキ芸術デザイン大学客員教授を経て2006年より東京造形大学に着任。専門領域はインダストリアルデザイン、デザインマネジメント。地域産業のプロデュース、デザイン開発研究を行う。日本デザインマネジメント協会理事長。日本芸術工学会理事。著書に『デザイン開発入門』(1994年、海文堂出版)、『デジタルイメージデザイン』(1996年CG-ARTS協会)、『リージョナル・デザイン フランス・ブルゴーニュの「クリマ」から学んだこと』(浦田薫と共著、2018年、現代企画室)ほか。